スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第104話 ロッカの予感


 早起きした男性陣(トウマ、セキトモ、イズハ、レオ、クルーロ)がスリーフォの町へ朝食に出かけると、ロッカ、バン、チナの三人と出会った。女性陣も早起きだったようだ。

「レオとクルーロがこんな早い時間に起きてるなんて珍しいわね。
 何かあったの?」

「昨日二人ともお酒飲まずに今日に備えたんですよ。早く寝ましたし」
「何だかイヤな予感がするわ。また雨でも降るかもしれないわね」

「どーゆう意味だよ。ロッカ」

 クルーロは心外なようだ。

 朝食は露店で売っているパンを購入。色々な食材が挟んであるパンが人気だ。
皆で広場に行き、くつろぎながら朝食を済ませた。

 女性陣は今の宿を継続することにしたようだ。
 出発地点が違うのでこれからはスリーフォの町を集合場所にする事になった。何か問題が起きても馬屋は近いのですぐに知らせる事はできるだろう。

 一旦解散。出発の準備をして再集合。一同はダンジョン3へ向かった。

◇◇

 ダンジョン3第4層に降りた一同は、違和感を感じていた。3層から4層へ降りる階段が長かったこともそうだがそれは外階段でも同じこと。違和感は周囲の空間の狭さだ。奥へ向かう方の壁が割と近く、少し歩けば壁といった感じだ。広さは精々20~30mといったところだろう。壁には人が通れる程度の穴が所々開いている。第2層の3つに分かれていた洞窟の通路とも違う。壊されてできた感じの穴の出入口だ。壁の厚さは30~40cmほどしかなく、脆そうな壁だ。すぐ先には別の空間がある。

「この壁。なんか脆くて崩れそうな感じしますよね?
 この穴、誰かが突き破ったのかな?」
「レオ、気をつけろよ」
「なんでオレなんだよ」
「レオが一番壁壊しそうだからだよ」
「・・・」

 一同はとりあえず第4層のセーフティゾーンに寄った。
 掲示板でクエストを確認しようとしたところクエストではなく、別の広い紙が貼ってあった。地図のようだ。

「これは・・・花の絵? いや地図でしょうか?」
「少なくともヨゴオートノ管轄区域の地図じゃないのは確かだね。
 ま、ここに貼ってあるってことは4層内部の地図だろうね。
 周りの空間は広いけど、多分ここが中央の大穴がある位置だよな?」

 地図を見ると、中央の大穴を表している広い区域の周りに12カ所の仕切り。まるで花びらのようだ。花びらの1枚の中に描かれている無数の仕切りはおそらく先ほど見た崩れそうな壁だろう。

「それにしてもこれは不自然です」
「バンもそう感じるか。こんな形の洞窟が自然環境でできるはずがないよな?
 全体が花みたいだし、整い過ぎている。まるで誰かが作ったみたいだ」

 セキトモも不思議な形の地図に興味を示したようだ。

「僕の考えだと、いやそんなことは・・・」
「何でもいいから気づいたこと言ってみてよ」

「う~ん。地図だとするとこれは大き過ぎるけど。
 この狭い空間の並びって何か虫の巣みたいだろ?
 例えば蜂の巣とか。
 それぞれが小部屋のようになっていて。
 いや、でもこんな大きい巣を作る生物なんて・・・」

「それだよ! セキトモやるじゃん。
 忘れてるかもしれないけど、元々ダンジョンは発見された太古の迷宮だろ?
 現在の人がダンジョンに関与した部分なんてほんの一部さ。
 大昔にいたのかもしれないぞ。超巨大生物。
 大地を掘って巣を作る生物・・・ミミズ、いや、蟻の一種かな?」

「こんなでかい巣を作る蟻がいたって事ですか?」

「俺の想像でしかないよ。証明しようがないもんな。
 蜘蛛かもしれないし、蜂かもしれない。
 でも大穴から何かの超巨大生物が出入りしてたと考えればしっくり来ないか?
 少なくとも俺たちは虫が大きくなってる姿なんてモンスターで見慣れてるだろ?
 想像できる範疇さ」

「なるほど」

「で、4層にクエストはないって事でいいのか?」
「なんだよ、レオ。折角大昔の世界に思いを馳せてたのにさ」

 バンは地図を書き写し始めた。細かい無数の小部屋を書き写すのは手間なので省略したようだ。

「おそらくここですね。
 一番奥の部分に印がつけてあります。ここにクリア証明があるのでしょう」

「優し過ぎない?」

「興行としては攻略のバランスを取る必要がありますよね?
 クエストがなく、地図とクリア証明の場所まで示してあるのは何故か。
 考えられる理由は一つです」

「モンスターが多過ぎる?!」

「それにまだ早い時間帯とはいえ、討伐者を1組も見かけていません。
 上の3層では多少は入って来ていましたよね?
 私たちより先行している討伐者は4層にもいるはずなのに」

「それって、雨が降ったあとだからですかね?」

「そっか。モンスターは更に湧いてると考えるか。
 先に入った討伐者たちに倒してもらって少しでも楽したいって事だ。
 悪くない考えだね」

「悪くないわね。それって私たちで沢山倒せるってことでしょ?」
「「そっち?」」

 ロッカは拳を合わせてやる気満々のようだ。

 おそらくモンスターは雨水が集まり滝のように入り込む中央の大穴付近から湧いていると予想される。クリア証明の場所へ遠回りして向かうか真っすぐ中央の大穴を突っ切って向かうかで意見が割れた。

 うん。予想通りというか。
 ロッカとレオがいる時点で正面突破になるよな~。
 二人を納得させる根拠がないと絶対譲らないって。
 ロッカなんて8人もいるのに遠回りする必要ある?だもん。

 前衛はロッカ、セキトモ、レオ、トウマ。
 後衛はクルーロ、バン、チナ、イズハ。

 次の小部屋に移る際はモンスターの急襲を警戒しつつ大盾を持つセキトモが先陣を切る。前は防げるので上空警戒。数次第だがモンスターを小部屋内で発見した場合は後衛陣が視界確保の明かりを立てていく。明かりを立て終わったら後衛陣も討伐に参戦。まずはこの繰り返しで中央の大穴を目指そうという作戦だ。

「さ、張り切って行くわよ!」

◇◇

 モンスターが出始めたのは警戒が緩み始めた4つ目の小部屋からだった。
 お互いにビックリといった感じだったが、相手は小型の牙蟻1体。牙蟻はすぐに眼を赤くして襲って来た。
 ロッカが瞬殺。
 牙蟻は霧散していった・・・。

 「オレの出番はしばらくなさそうだな」

 バンの話では中央の大穴まで小部屋は50ほどあり、モンスターの取り合いをしなくても必ず戦闘になるそうだ。陣形は崩さず目の前の敵を倒して欲しいとのこと。

 それからはモンスターを倒したくてうずうずする間もなく小部屋を移るたび、徐々に出現するモンスターの数が増えていった。小部屋を20通過する頃にはひと部屋に10体を超えるモンスターがひしめいていることもあった。

 出現したのは蟻、蚊、ハエ、ムカデ、蜘蛛、鼠、イモリ、蛇などの小型~中型だが、名も知らない洞窟にいそうな虫のモンスターもいた。中型なのに魔石・中を落とすモンスターもたまにいるようだ。魔石・中を落とすモンスターは少し手強い。

 モンスターが落とした魔石の回収は主に夜目の効くイズハがやってくれている。ついでにチナが飛ばした矢の回収もしているようだ。

「イズハありがとー。おかげでボクは心置きなく射抜けるにゃ」
「暗いので飛ばし過ぎると見失うっすよ」
「うっ、ほどほどにするにゃ」

「少し休みながら進みましょう。
 このままだと抗魔玉の力の回復が追いつかなくなるかもしれません」

◇◇

 小休憩をはさみ、再び小部屋を進んでモンスターと戦闘しているときだった。

”ギキーン!”

 甲高い音が鳴ったあと、ロッカは後衛に退いた。

「バン、交代して。多分、鉱石を取り込んだ複合体がいるわ。
 三刃爪なら大丈夫だと思う」
「分かりました」

 バンは何が起きたのか理解したようだ。すぐにロッカと交代した。

 金属疲労。負荷を与え続けると硬い金属でもいつかは折れる。
 ロッカの手にしている短剣は折れていた。2本とも真っ二つで刃先がなくなっている。ロッカの短剣は量産品にしてはよく持ちこたえていたほうだ。相手が堅かったとはいえ2本同時に折れたのはロッカが短剣を均等に使っていた証でもあった。

「嫌な予感は雨じゃなくてこっちだったようね。
 まさか同時に折れちゃうなんて・・・斬丸1号、2号、今までありがとう」




※この内容は個人小説でありフィクションです。