スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第107話 無理はしない!


 忍びチームの三人が戻ると一同は急いでセーフティゾーンに戻った。トウマの視界に扉から出て行こうとする管理人の姿が。

「ちょっと待って~! 俺たちも出ます!」

 扉に手をかけていた管理人は振り返った。

「おや、まだ戻って来る人がいましたか。あやうく扉を閉めるところでした。第4層はダンジョン内に留まる人も多いですし、扉が閉まるギリギリの時間に戻って来る方々はあまりいないですからね」

「間に合って良かった~」

 しかし、腕輪に第4層クリアの印を刻んで貰う時間はなさそうだ。クリア証明の有効期限がその日限りだった場合、苦労が台無しになってしまう。そう思ったバンは聞いた。

「私たちクリア証明を手に入れたのですが腕輪に印を刻んで頂けるでしょうか?」

「おお、手に入れたのですか。残念ながら今日はもう印を刻む時間はないですね。
 ですがクリア証明は次の入れ替え日まで有効ですよ。
 偽造防止のため入れ替え日は内緒ですが、カードのナンバーだけ控えさせてもらえますか?」

 ロッカは持っているクリア証明を3枚渡した。

「ほう。3組で協力して挑んだという訳ですね。
 それでもモンスターの多いこの層をクリアされるとは凄いことですよ」

 管理人はカードのナンバーを控えた。

「はい。カードはお返ししますね。
 ナンバーを控えましたので腕輪に印を刻むのはいつでも大丈夫です。
 明日以降にまたお越し下さい」

「有難うございます」

「あ、行けば分かる事ですが皆さんに助言を一つ。
 本来なら印を刻んだあとに助言するのですが、例外なのでここで言っておきます。
 5層以降は留まる準備をして向かった方がよいですよ」

 その助言にいち早くクルーロが反応した。

「え? どういうこと?」

「さ、さ。遅くなりましたので皆さん出ますよ~」

「え~、それだけ~」

◇◇

 ダンジョンの出口で換金。手に入れた魔石の数を数えるだけでも一苦労だった。

【換金報酬】
 魔石・小 110個 55万エーペル。
 魔石・中 4個 32万エーペル。

【素材報酬】
 鉱石を身にまとった何かの虫の顎の鋏 9万エーペル。

 8人での分け前は一人12万エーペル。

【三組共同換金報酬】
 魔石・小 112個 56万エーペル。
 魔石・中 5個 40万エーペル。

 12人での分け前は一人8万エーペル。

 換金した魔石だけでも231個。複製体もいたので300体以上は倒しているだろう。小型が多かったとはいえ相当な数だ。運営の人は増え過ぎていたモンスターに頭を抱えていたようで喜んでいた。
 運営の人にあと数日、第4層でモンスターを討伐して欲しいと頼まれたが断った。協力する義務はない。モンスター討伐専任を雇う余裕はあるはずだ。

 換金せずに残した魔石はそれぞれの組に分けて道具用で使用して貰うことになった。当初の取り決め通り、ユニオン・ギルズと協力してダンジョン攻略を進めるもここまでだ。

「皆、お疲れ~。
 疲れた割には少ない報酬だったな~。
 クエストだったら高額ついたやつもいただろうに」
「クルーロ。今日はクリアってことでいいんだよな?」
「あ、そっか。クリアできたら解禁だったな。
 皆頑張ったし、俺も飲みたい気分だ。打ち上げに行こう!」

「このメンツがそろってて飲みに行かないわけないわよね」

 ギルは当然飲みに行くつもりだったようだ。レオと肩を組んで町に向かって歩き出した。日が落ち始めているので町に着く頃には辺りは暗くなっている事だろう。

◇◇

 少し遅くなったせいか、一同がスリーフォの町の最寄りの酒場に着くと12名分の席が確保できないと言われた。席が空くまで待てそうにないので普段行かない町の中央にあるギルド近くの酒場に行ってみることに。

 ギルド近くの酒場はそこまで賑わっていないようで12名全員が入れる個室が空いていた。少し遠いが料理や酒の質が変わらなければ穴場かもしれない。

「皆、お疲れ~。
 ここならダンジョン内の話しても大丈夫そうだな。
 まずは4層クリアに乾杯するか。
 え~、我々が成し遂げた――」

『乾杯~!』

「え? まだ俺の話終わってなかったのに・・・」

「皆、お腹空いてたのよ。クルーロの音頭なんか待ちきれないわ」

 皆、腹が減っていたようで出て来る料理が片っ端から消えて行った。クルーロも出遅れまいと食に走る。

 少し落ち着いた頃、トウマは忍びチームがクリア証明を取って来たときのことを聞いてみた。

「単純よ。壁の上進んで大穴に出たら東方向の奥端に向かっただけ。
 方位磁針があるから迷う事はなかったわ。
 あとは降りて宝箱からクリア証明を取り出して戻ったって感じね。
 大穴の付近は見下ろすとモンスターだらけだったわよ。
 あそこで下に落ちたら終わるわ」

「へ~、上から見た光景か。俺も見てみたかったな~」
「ゾッとする光景なのは間違いないっす」

 壁の上を歩くだけでも大変だと思うけど、下にわんさかモンスターがいたら流石にビビるかもな。ついて来いって言われなくて良かった。

「タズさんが落ちそうになったときは冷や冷やしたっすよ」
「えへへ、ごめんなさい。
 モンスター来なかったので少し調子に乗ってしまいました。
 でも私だけ明かり持っていなかったので足元が見えづらかったのは確かですよ」

「モンスターが来たとき皆が明かり持ってたら戦いづらいでしょ。
 万一のときの為にタズを連れて行ったの。
 治癒のロッド持ってるし、回復要員ってのもあるわね」
「う~、結局、師匠の後ろについて行っただけでした。
 少しくらいは活躍したかったです~」

 少しうなだれているタズをサイモンがなだめた。

「タズは私たちの代表で行ったんだ。私たちの中から誰も行ってないとクリア証明を取って来て貰っただけになってしまうだろ?
 タズが一緒に行ったという事に意味があるんだ」
「そっちから見たらそうかもね。
 それにモンスターが来なかったという事は私たちが上手く気配を消せたって事よ」
「そっか。何の役にも立てませんでしたけど、役目は果たしたって事ですね。
 ならいいか~」

「やっと落ち着いたにゃ~。
 クルーロ、ボクは今日弓の使い過ぎで腕が痛くなったにゃ。
 矢も何本か失ったにゃ。
 ということで明日はお休みにするにゃ」
「は? 何が、ということでだよ。昨日オフで休んだばかりだろ」

 そう言って周りを見渡したクルーロは皆が消耗していることに気づいたようだ。食事をとり、気を抜いたことで溜まっていた疲れがどっと出ている。クルーロもだ。
 レオは酒を飲みながらうつろうつろしている。

「レオまでヘバってるのか。
 無理ないか。モンスターの急襲に神経研ぎ澄ましてたからな。
 こりゃ明日は休みにしたほうが良さそうだな。
 みんな~! 疲れてるみたいだから明日はオフな。無理はしない!
 無理して命を落としたら洒落にならんからな~。
 ユニオン・ギルズは好きにしろ」

『了解~』

「なんだレオ。もうヘバったのか?
 俺はまだいけるぜ」
「ギル・・・。お前らは午後から討伐に加わったからだろ?
 オレたちは倍以上消耗してるんだ」
「そうか。今度は俺たちがダンジョン先行する事になりそうだな。
 何かあったときはまた頼むぜ。わはは」

「あ、そうだ。
 ユニオン・ギルズが先行するのは構わないけど、しっかり準備して行けよ。
 運営の助言が気になる。もしかしたら出られなくなるかもしれないって事だけは頭に入れておいたほうが良さそうだ」

「そうだな。少し酒を持って行くか」
「そっちかよ!」

◇◇

 翌日は皆、ゆっくりと身体を休め、第5層はダンジョンに留まるかもしれない事を考慮して町で消耗品を補充したり入念な準備をして過ごした。
 バンはどデカいリュックに色々詰めて持って行こうとしていたがロッカが止めた。素材を持ち帰る用に空けておけと。
 その後、ロッカはバンを連れて気晴らしに馬次郎とファスティオンを散歩に連れて行ったようだ。




※この内容は個人小説でありフィクションです。