スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第105話 皆へのお披露目


 突然前衛を退いたロッカのことが気になったトウマはイズハと交代して様子を見に行った。ロッカはしゃがんで何やら呟いている。

「新しい双剣の名前『雷丸』か『電丸』にしようと思ってたけど、あなたたちの名を引き継がせるわ」

“キン!”

 ロッカは斬丸1号の残っている刃を右の双剣に当てた。

「バトンタッチよ。右の双剣の名は『右斬丸』」

“キン!”

 次に斬丸2号の残っている刃を左の双剣に当てた。

「左の双剣の名は『左斬丸』」

 トウマはそれを見守っていた。

 なんかの儀式?
 短剣折れちゃったんだ。双剣の名前、右斬丸と左斬丸にするのか。
 今度の双剣は柄の部分が違うから見分けはつくもんな。

 ロッカは斬丸1号、2号を壁の隅に置き、転がっていた石を少し拾い集めて被せ、折れた短剣にお祈りして別れを告げた。

「トウマ、何見てんのよ」
「いや、何してんのかな?って」
「斬丸1号2号が折れちゃったのよ。
 直しようもないし、ここでお別れしたのよ」

 名付けるほど愛着あっても持ち帰りはしないんだな。

 ロッカは鞘に納めた双剣に抗魔玉を着けた。

「さ、戻るわよ。
 ここからは右斬丸と左斬丸に頑張って貰うわ」

 1号、2号よりはマシか。丸は必須なんだろうか?

◇◇

電撃の双剣(ツイン・ボルト)!」

”バリリッ・・・!”

 レオの前方にいた中型のムカデのモンスターにプラズマが走る。ロッカは動きを止めたムカデを斬り刻んだ。
 ムカデが霧散していく・・・。

「ヒュー。それがロッカの双剣の付与能力か」
「凄いにゃ~」

「あんたたちへのお披露目は派手にいかないとね!
 巻き込まれたら痺れるから気をつけて」

「おまっ、あぶねえだろ。オレの目の前で」

「ムムム。そういう話なら俺のとっておきの一つを見せてやるよ。
 あっちの三体の牙蟻もらうよ!」

 クルーロはヴェアリアスロッドを構えた。装着しているのは真魔玉・赤だ。通常なら炎の球が飛び出すはずだが、ロッドの先から炎がぐんぐん伸びて鞭のように垂れ下がった。

「しなれ、『炎の鞭』!」

 クルーロは炎の鞭で三体の牙蟻を振り払った。

”ボッ!ボッ!ボッ!”

 炎の鞭が当たると同時に次々と火が着いていき、三体の牙蟻は焼け焦げながら霧散していった・・・。

「へ~、そんな隠し技持ってたんだ。やるわね!」

「クルーロ、それブースト3倍使うって言ってたにゃ?」
「しまった! 今ので抗魔玉の力切れちゃったよ」

「バカなの?」

◇◇

「バン、さっきの堅いやつもう倒しちゃった?」
「はい。何の虫か分かりませんでしたがコオロギの一種だったでしょうか。
 確かに鉱石を身にまとった複合体でした。
 ロッカの言った通り、三刃爪で問題なく関節を切れましたよ。
 胴体のほうに核があったようで顎の鋏の素材が残りました」

 バンは素材が手に入って嬉しそうだ。

「そう。素材狙えとまでは言ってないんだけど・・・。
 小型だったし、ま、いいか。ありがと、バン」

 ロッカはさらっと流したけど、バンさん素材狙って鉱石を身にまとった複合体を切り落としたってことだよな?
 新しい三刃爪かなり凄くなってない?

 一同はまたしばらく小部屋を真っすぐに進んでいった。

”ザン!”

 小部屋に入って来たモンスターをレオが一振りで片付けた。

「そろそろ大穴に着いてもいい頃じゃねーか?」

「そうだな。皆、上見てみろよ」

 今まで見えていなかった洞窟の天井が少し明るくなって見えている。小部屋の壁は天井までは仕切られておらず中間あたりで途切れていた。壁の高さは10~15m。天井までは20~30mありそうだ。隙間があるので大穴からの光が届いているようだ。

「この壁って途切れてたんですね。
 今まで暗かったから気づいてなかったな」

「あと2、3部屋ってところかな?」

”ザン!”

「また入って来やがった」

 レオは大剣の抗魔玉を付け替えた。レオもバンが大剣を使っていたときと同様で3つの抗魔玉の付け替えでやりくりしている。つまり鞘から出しっぱなしということだ。抗魔玉の力が切れる前に付け替えたとしてもこの繰り返しでは2/3程度までしか力は回復しない。どこかで休ませてフルに回復しないといずれ力は枯渇するだろう。使い回すにはフル状態の抗魔玉を4つ以上持っていることが理想だ。
 だが、討伐者が保持しているのは余裕がない限り3つまでだろう。理由は抗魔玉の力を維持できても使用者の体力が続かない。数多く持っていても意味がないからだ。

「その使い方するならレオは抗魔玉4つ以上持っててもいいかもな。
 実際、武器を出してる時間が長いだけで使ってるのは僅かだし、体力切れの心配はなさそうだ」

「くれ」
「イヤイヤ、それくらいもう自分で買えるだろ」

 クルーロの予想通り、小部屋を3つ進むと中央の大穴へ出た。そこはどこを見てもモンスターだらけ。まさにモンスターの巣窟状態だった。
 そして、大穴はこの 4層で途切れていた。中央は泉のように水が溜まっていて所々で小川のようにどこかへ流れ出ているようだ。
 深そうな泉には魚のモンスターらしき背びれが周回している姿も見える。奥には壁の空いた穴を通れない巨大に近い大型までいる。

「おいクルーロ。これはオレたちで片付けられる数じゃねーぞ」
「だから俺は遠回りでもいいって言ったんだよ!
 撤退だ!いいよな? ロッカ」

「・・・分かった。これは仕方ないわ」

 こちらに気づいたモンスターたちが赤い眼をして追いかけて来た。

「この数はさすがに相手してらんない。とりあえず逃げるぞ!」

◇◇

「ハァ、ハァ、ハァ・・・。
 あそこを正面突破するのは難しそうですね?」

「まさかあんなにモンスターがいるとは、正直想定外だよ。
 少し多いくらいなら行けるかと思ってた」

「疲れたし、一旦セーフティゾーンに戻ろうぜ。
 同じルートで戻るならモンスターはそんなにいないだろ」

「休むだけならこの辺でもいいんじゃない?」

「イヤ、一旦戻ろう。作戦変更だ。
 モンスター警戒しながらだと考えがまとまらないし、途中で経路変えると道に迷うかもしれない」

 一同はセーフティゾーンに戻った。

 お昼時だからかセーフティゾーン周りにも討伐者が多くなっていた。それぞれがどの方向に進むか相談している感じだ。

 クルーロはイズハに聞いた。

「イズハ、魔石いくつ手に入れた?」
「多くなってからは数えてないっす。このくらいっすね」

 イズハは魔石を入れている巾着袋を見せた。袋いっぱいという感じだ。

「それぞれで拾ったやつも少しはあるよな?
 俺たちだけでも確実に討伐数100は超えてるぞ。
 雨あがりとはいえ、どれだけ発生してんだよ」

 ダンジョンに挑んでいる討伐者は討伐目的で来ている訳ではない。戦いの音に反応して集まって来るモンスターも多くいる。モンスターの数が多いと分かると避けて進みたくなるものだ。そのツケが回って来ていることには誰も気づいていなかった。

 バンとセキトモはモンスターについて話をしている。

「擬態していないマザースライムらしき姿は確認できませんでした。
 やはり、研究誌の情報は正しいようですね」
「モンスターからでもスライムに情報を渡せるってやつか。
 確かにあれだけモンスターがいたらその分取り込まれる生物もいないと辻褄が合わないもんな」
「何の話ですか?」

 最新のモンスター研究誌によると、情報を持たない純粋なスライムとゴム兎を同じ空間に閉じ込めた結果、スライムがゴム兎に擬態したらしい。
 このことからモンスターからスライムへの情報の伝達もできるという事が分かったようだ。勿論、敵対関係や無関心なスライムは擬態したモンスターから情報を貰うことはないのでお互いに了承したらということだろう。
 擬態したモンスターはスライムを食べて質量をあげることもできるようだ。逆にスライムが擬態したモンスターを取り込んで擬態することはない。モンスターのもつ擬態の情報は記憶のようなもので体に刻まれているものではないようだ。もしスライムが取り込んだモンスターに擬態しようとすれば擬態の擬態で再現度がかなり低い、醜いモンスターになるのではないかという予想らしい。

「分かったぞ。
 スライムが他のモンスターから情報を貰っているということは少なくとも敵対していない。だからここのモンスター同士は余り争っていないんだ」

 セキトモとバンは二人して納得がいったようだ。

「まあ、モンスターが減るわけじゃないからね」

「よし、気にしなくて大丈夫ということは分かりました!」
「わはは」




※この内容は個人小説でありフィクションです。