スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第106話 忍びチーム再結成


 ダンジョン3第4層のセーフティゾーンで休憩を取っていると、ユニオン・ギルズが入って来た。

「お! とうとう追いついたみたいだな」
「師匠~」

「あんたたちもう3層クリアできたってこと?
 この前教えたヒント1つしか分かってなかったわよね?」

 カリーナが説明した。

「ギルがセーフティゾーンから見える場所の何処かにあるはずって言い出したのよ。
 半信半疑だったけど、宝箱が隠せそうな柱周りをしらみ潰しに探してみたの。
 まさかホントに見つかるとは思ってもいなかったわ。宝箱じゃなかったけどね。
 ギルって持ってるときは持ってるのよね~。柱の小扉に気づいたのもギルだし」

「セーフティゾーン周辺に絞って探したわけか。
 そりゃ早いはずだ」

「お前らはここで足踏み中なのか?」

「行ってみれば分かるけど、この層はモンスターだらけだよ。
 俺たちだけでももう100体以上は倒してる」
「マジか・・・」

 今回のクルーロは情報を隠すことなく4層の説明をした。クルーロの狙いが分かったのは次に続く言葉だった。

「で、ものは相談なんだけど。俺たちと一緒にこの層を攻略しないか?
 戦力は多いほうがいいだろ?」

「わはは。俺たちは4人だし、それは悪くない提案だな。乗った!」

 12人の大所帯になるので6人ずつに分かれ、小部屋を変わるごとにモンスターとの戦闘を交代しながら進もうという流れになった。
 バランスを考えてセキトモとチナがユニオン・ギルズに手を貸すことになった。熟練者が3人いるので盾役と遠距離攻撃ができる二人を加える感じだ。
これから得る報酬は皆で分配という取り決めもかわす。

 こっちはレオが先陣切って次の小部屋に入るのか。
 盾持ちじゃないけど、レオなら大丈夫そうだもんな。
 それよりセキトモさんがあっちだから戦闘中の連携できなくなったよ。どうしよ?

 チナはオロオロしながらトウマに近づいて来た。

「トウマ~、ボクあっちに協力しろって言われたにゃ。
 どうすればいいにゃ~。イズハに矢の回収して貰えなくなるにゃ~」

「いや、それは自分でやって下さいよ」

「チナさん、私で良ければ矢の回収引き受けますよ!」
「お~、救いの神にゃ~。タズはいい子にゃ」

 チナはタズの頭をなでまくっている。

 6名ずつに分かれた組の呼び方はレオチームとギルチームになった。

「扉が閉まる前に戻りたいところだな。
 タイムリミットはあと4時間だ。ん~、なんか無理な気がしてきた」

◇◇

 二組は地図の12枚の花びらでいう左3つ目のエリアまで進み。そこから中央の大穴を目指している。花びらのような仕切りは天井まで届いている分厚い壁だった。4層を支えている壁柱のようなものだ。完全に仕切られているわけではなく通路のように隣のエリアに繋がっている場所が何か所かあるようだ。

 レオチームとギルチームは小部屋を移る度にモンスターとの戦闘を交代しながら進んでいる。今はレオチームがお休みだ。魔石ランタンを持つ明かり役はお休みチームのほうで請け負っている。勿論、お休みチームは一切手助けしないという訳ではない。なるべく休むようにしているといった感じだ。

「ロッカ、ホントにこっちでいいんだな?
 俺にも説明して欲しいんだけど」
「大丈夫。私に考えがあるから任せて。なるべく人が通らない場所がいいの」

 こういうときのロッカは隠したい訳じゃなくて説明が面倒くさいだけなんだよな。

「クルーロ、あと3部屋くらいで大穴に着く位置まで行ったら教えてよ」
「そこは人任せかよ」

 中途半端な位置から中央の大穴を目指す討伐者グループはいないだろう。ロッカの狙い通りなのか1グループも見かけていない。その代わり、誰も通らないルートはモンスターが倒されてないので普通に多いようだ。

 ギルチームが小部屋にいるモンスターを一掃し終えた。

「ふ~。確かにモンスター多いな。次の部屋はレオチームの番だぜ」
「ご苦労さま。進みは止まってないのに休みながら行けるのは助かるわ。
 抗魔玉の力も回復できるし、午前中より順調よ」

◇◇

「ついたぞ、ロッカ。
 まさかこのまま大穴に突っ込むってわけじゃないんだろ?」

 ロッカは天井を見上げた。

「こっからは私たちの出番。
 忍びチーム再結成よ!」

 イズハとタズが呼ばれた。

 ロッカの話ではここから壁を登って途切れている壁の上を伝って奥まで行ってくるそうだ。ロッカは最初、大穴に着いたとき上空の途切れている壁が輪のように奥までつながっていたのを見逃していなかったのだ。

「あの高さなら飛ぶモンスターでもそうそう来ないと思うわ。
 気づかれたら倒すだけよ。
 落ちたら危ないけど壁は30~40cmくらいの幅があるから大丈夫でしょ」

 いやいや、高所の狭い足場でモンスター来たら普通は戦えないよ。

 バンは関心したようだ。

「なるほど。このモンスターの多さで運営はどうやって奥にクリア証明を置いてきているのか気にかかっていましたが。壁の上から行っているのだとしたら」
「でしょ。多分、運営もやってるわよね。
 この抜け道って行けるんじゃない?」

 ロッカは最初から登っているところを他の討伐者に見られるとマネされると思ってここまで進んだようだ。
 戻って来る為の目印になるように途切れた壁の上に魔石ランタンを一つ置いて行くつもりのようで目印が見える大穴に近い位置がよかったということらしい。

 あとは忍びチームが戻るまでこの場所を死守していればいいだけだ。

 最初に壁を登ったのはイズハだ。刺突剛糸のクナイ2本を壁に刺して15m以上ありそうな壁を難なく登っていった。それから糸の付いたクナイを落とし、ロッカとタズを引っ張り上げた。
 魔石ランタンを1つ設置。ロッカとイズハが前後で魔石ランタンを持つ。
 保険で糸を三人の腰のベルトに通しておくようだ。落ちるときは三人一緒だ。

「タズ、足元気をつけるのよ」
「はい!」
「タズ、もし落ちたら壁に剣を刺して捕まるのよ」
「わ、分かりました!」
「タズ、気配消すの忘れないで。
 もしモンスターが近づいてきたらブースト使って威嚇して。
 弱いやつなら近づいて来ないから」
「分かりました!」

「お~い! タズの面倒みるのもいいけど、今回はクリア証明3枚だからな!
 忘れんなよ!」

「分かってるって」

「あと、2時間以内に戻ってこないと多分扉が閉まるから間に合わないぞ。
 焦らず急げよ!」

 クルーロ。急げって足元が狭い壁の上で急ぐのは危ないだろ。

「こっからなら往復5kmないわ。慎重に行っても2時間あれば戻ってくるわよ」

「よし! じゃ、頼んだぞ」

「皆さん、行ってきま~す!」

 カリーナは心配顔だ。

「タズ、気をつけて行くのよ!」

 ロッカを先頭に三人は途切れた壁の上から奥へ消えて行った。目印に置いてある魔石ランタンの明かりだけが残っている。

◇◇

 残っているメンバーはただただ待っているだけだ。たまに小部屋に入って来るモンスターはレオがすぐに片付けている。そして1時間半が経過しようとしていた。

「戻って来ないですね?」

 セキトモは壁を触って上を見上げた。目印となる魔石ランタンの明かりは消えていない。

「心配だな。大丈夫だろうか。
 あの三人は僕らの中じゃ軽いほうだけど。
 この薄い壁、崩れやすいし、岩石の類じゃなさそうだ。土に近いかな。
 バン、どう思う?」

「やはり何かの巣でしょうね。現在、これほどの規模の巣を作る生物は確認されていませんが」

「大昔には地上にそんな生物がいたのかもしれないな。
 だから地中深くに人が作った迷宮があるのかもしれない」

「避難してたって事ですかね?」

「何とも言えないね。迷宮にはお宝が眠っているそうだし、一部の権力者が作ったのかもしれない。天変地異で地中に埋もれた可能性もある。
 今の僕らには予想することしかできないからな」

 座っていたレオが立ち上がった。

「戻って来たみたいだぞ」

 一同が壁の上を見上げていると、魔石ランタンの明かりの近くにロッカが顔を出した。イズハとタズも一緒のようだ。忍びチームは全員無事だった。

「お待たせ! クリア証明手に入れて来たわよ」




※この内容は個人小説でありフィクションです。