スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第20話 博士からの提案


 トウマとセキトモは博士の邸宅を訪ねていた。
 二人は邸宅の中を普通に歩いていたロッカに少し待てと言われて客室で一緒に待っている状況だ。

 まだロッカのリハビリは開始しないのかな?

「セキトモさん、大盾も持って来てるけど討伐?」
「いや、よく分からないけど博士に武器と防具も持参するように言われてたからね」
「俺はロッカがどういうリハビリするのか分からなかったし、一応、剣だけは持って来てますけど」
「いきなり討伐行くとか言い出したりしてね?」

「あり得ますね」

 しばらくすると、博士が重そうな荷物と共に客室に入って来た。

「待たせたね。さっそくだが少し話をさせてくれ。
 君たちに提案があるんだ。勿論断ってくれても構わないので聞くだけ聞いてくれ。
 あ、ロッカ君とバン君は裏庭に行ったよ。後で顔を出すといい」

 トウマとセキトモはお互い顔を見合わせた。

 何だろ?

「君たちは本来と違って順番がぐちゃぐちゃだがここに来たのも何かの縁だろう。
 バン君が使っている武器全てとは言わないが少なからず知っているね?」

 二人は頷いた。

「バン君が持っている武器は我々が開発している武器なんだ。
 バン君には開発した武器の性能などを実戦で評価して貰っていてな、開発途中のものが多いんだよ。なので口外はしないで貰いたい」

 見たこともない武器だと思っていたけど、そういう物だったのか。

「はい。分かりました」

「でだ。頼みというのは君たちにもバン君と同様に我々が開発した武器を評価して貰いたいのだよ。要は君たちをスカウトしたい」

「「スカウト?」」

「それって、俺たちもバンさんが持ってた武器を使えるってことですか?」
「同じものではないがね。開発中の武器を提供しよう。
 その代わり、必ず使用した武器の評価を報告して貰うことになるがな」

 博士は書類をテーブルの上に出して説明した。

「誰でもスカウトしている訳じゃないんだ。この条件の所を見てくれ」

《討伐者のスカウト条件》
 1. 他の機関に所属していないこと
 2. 少人数(1~5人)で難易度C以上のモンスターと相対して生き残っていること
 3. 難易度C以上のモンスターを倒し、とどめをさしたことがあること
 4. 開発途中の武器の存在を知っていること

「本来は1~3の条件を満たした上で実力を確認したのちに開発中の武器の存在を教えて興味があるか反応を見るんだ。
 ここに招くのは秘密保持契約を結んでスカウトに乗ってくれたあとなんだがね。
 この東大陸で契約している者はまだ誰もいないし、君たちは例外中の例外だ。
 が、条件は満たしている」

「確かに満たしていると思いますが僕は同行していただけというか、とどめもたまたまというか・・・」
「俺だってロッカとバンさんがいなかったら・・・」

「2と3についてだな。どちらも似ている項目だが少し言い換えようか。
 2は少人数でモンスターと対峙して生き残る運があること。
 3はモンスターとの戦闘を終わらせられる力量があること。
 武器の評価を頼む訳だから生きて帰ってくれないと困るんだよ。
 死人は喋れないからな」

「なるほど」

「それに、すでに実績のある討伐者は何かしらの機関に所属している場合が多くてな。1を満たす人材を探すことのほうが大変なんだ。
 あの二人にはスカウトする権限を与えてはいたが、まさかこんな形になるとは思ってもいなかったよ。
 報酬は新しい武器の提供と今後の生活面での支援だ。君たちにとっても悪い話じゃないと思うが、どうだね?」

「セキトモさん、どうします?」
「ちょっと待って下さい。
 提供して頂く武器は他の討伐者に見せてもよい物なんですか?」

 あ、そうか。武器が見せられないなら討伐自体が大きく制限されてしまうよな。

「そうだな、討伐時に見せる分には構わんよ。
 武器の宣伝にもなるしただ、手に取らせて構造を調べさせたりはしないで欲しい。
 討伐者連中には出来ないと思うが技術を盗まれる可能性はゼロじゃないからな。
 どこで手に入れたか聞かれた場合は中央大陸の伝手で手に入れたとでも言ってくれればいい。断る場合は一応、秘密保持契約書にサインしてもらうことになるがな」

「・・・分かりました。トウマ、僕はこの話受けようと思う」
「即決ですね。いいんですか?」
「今後も討伐者としてやっていこうと思っているからね。
 僕にとって武器の提供や生活支援は何より有難い話だ」

「トウマ君はどうするかね?
 考える時間が必要なら少しだけ待つが長くは待てないぞ」

「俺もやります!
 セキトモさんとは違いますが俺はどんな武器使えるかワクワクするんで」
「ぷっ、トウマらしいな。あはは」
「笑うとこありました?」

「良かった。じゃあ、二人とも契約成立だ! まずはこの書類にサインしてくれ」

 二人はいくつかの書類にサインをし、武器を使用する上での注意点、評価や報告の仕方などの説明を受けた。製品で採用されるかは別だが名が無い武器には呼び名を付けていいようだ。
 生活支援での日当は1万エーペル。契約解除しない限りオフの日でも支給される。一定期間分をまとめて支払われるようだ。

 博士は持って来ていた重そうな荷物を開封した。まるで二人が話を引き受けると分かっていたような準備のよさだ。

「さっそくだがセキトモ君、君にはこれを使って貰いたい」

 博士が取り出したのは変わった形状の武器だった。槍の穂先が長く、幅があり、片刃の剣状になっている『グレイブ』だ。突くだけでなく薙刀のように振り回して斬りつけることも出来そうな武器である。

 でも、これは柄が随分短いような?

「こいつは突くと普通の槍の長さくらいまで伸びるんだ。
 私は重くて扱えないがセキトモ君、試してみるかい?」

 武器を受け取ったセキトモは距離のある空間へ向けてグレイブを突いてみた。

”ビュッ! グーンッ、ガチッ!”

「おー、伸びた! 面白ーい」

「元の短い状態に戻すにはここを押して収納するって感じだ。
 しっかり固定されるのでけっこう硬いがね。
 この収納した短い状態なら近接での戦闘も可能になるだろう」

「・・・凄いな、これ。でも少し重いかな?」

「だろうな、元はバン君に使わせてみようと思っていた物なんだ。
 多少重い武器だがセキトモ君は大盾を持てるくらいの腕力があるみたいだし、慣れは必要だが使いこなせるだろう。
 バン君に渡した『剛拳』と『長柄の大鎌』は見たことあるかい?」

「いいえ、僕は」
「俺は見たことあります」

「あの2つはバン君に扱いづらいって言われてしまってね。早々に返却されてしまったんだよ。長所が少ししか書いてなくて、あとは短所ばかりズラズラと書かれた報告書付きだぞ。ひどいよな? 面白いアイデアだと思ったんだがね」

「あれ返しちゃったんだ。凄かったと思いますけど」
「だろ~? でも返却されてしまったのだよ。
 前に威力が凄い弓を作ったこともあるんだがバン君以外は弓が重すぎて弾けないって、1日で返されてしまたこともある。ははは」

「バンさんしか使えないようなのはちょっと」
「だよな。で、このグレイブにも自信があるんだがバン君に何度も連続で返却されると流石に凹みそうだし、槍を扱っているセキトモ君のほうが合っていると思ってね。ちょっとその大盾を借りるぞ」

 博士は大盾の内側に何やらガチャガチャ取り付け出した。

「鞘はセキトモ君専用に改造してみたんだ。
 これでその武器の短縮状態であれば大盾を鞘替わりにすることが出来るはずだ。
 持ち手の部分が大盾から出ているがこの方が武器の取り出しはしやすいだろ?」

「「お~!」」

「気に入ったかね?」

 調子に乗った博士は話を続けた。

「さらにぃ~、抗魔玉を1つあげよう。この武器は見ての通り2スロットタイプだ!
 セキトモ君のと合わせて2つ同時に着けることで力の効果持続時間が2倍となる。
 長物は収納しづらいからその短所もカバーできるぞ。
 それからトウマ君にも抗魔玉を1つあげよう」

「「おぉ~!!」」

 盛り上がった。




※この内容は個人小説でありフィクションです。