スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第21話 新しい力、炎熱剣


 博士からの勧誘を快諾したトウマ、セキトモの二人は契約を結ぶことになった。セキトモはさっそく博士から新しい武器、グレイブを提供して貰うことになり、その説明を受けて盛り上がっていた。

「博士、博士! 俺にも何か新しい武器はないんですか?」
「今のところトウマ君には無いな」

「ガーン、セキトモさんだけですか・・・」

 セキトモはうなだれているトウマの背中をポンポンと叩きながら言った。

「まあ、まあ、トウマもそのうち貰えるさ!」

 むー。新しい武器を貰ったセキトモさんに慰められてもなぁ。
 グレイブ眺めてニコニコしてるし。

「そうそう、トウマ君。この前はロッカ君の事があって先送りしたが、契約も済ませたし、知らせておく事がある」
「ん? 改まって何ですか?」

「君が持っている2スロットの剣だが、この前確かめさせて貰ってハッキリ分かったよ。その剣は20年ほど前に私が作った物に間違いない」
「え?! これ博士の作品だったんですか?」
「その剣の刀身の根本にスライムに雷が落ちたような刻印があるだろ?
 剣を少し抜いて見てくれ、紛れもなく私が作った物だ」

 トウマは自分の剣を少し鞘から抜き、刀身の裏表を確認すると片側に小さな刻印が刻んであることが分かった。

 確かに剣の刀身の根本部分に〇に雷が落ちたような刻印があるぞ。
 〇はスライムを模したものだったのか。

「今は量産品と模倣品が出回っているが私が制作した物にはその刻印がついているんだよ。限られた武器にしかその刻印はついていない。まさかこんな所で再び出会うことになるとはな」

 セキトモはトウマの剣に関心を示したようだ。

「へ~、トウマの剣って20年前の物だったのか。それにしてはキレイに手入れしてあって状態もいいよな」

「これはじいちゃんから餞別として貰った剣なんですけど、そんな古い物だったんですね。新品だと思ってた~」

 博士は更に付け加えた。

「その剣には抗魔玉と真魔玉【赤】が着けてあったはずなんだが・・・失っているようだね?」
「え?! マジですか? でも最初から着いてませんでしたよ」

「まあ、普段は取り外していただろうしな。どういう経緯で君のおじいさんの所に渡ったのかは分からないが古い物だし、その過程で無くなった可能性はあるな。抗魔玉も真魔玉も高価な物だ、売却されていてもおかしくはない。
 だが、その剣の品質に関しては私が保証するよ」

「トウマ、その剣は博士のお墨付きだってさ。良かったな!」
「う~ん。俺的には何も変わらないんですけど・・・」

「ははは、そう落ち込むな! トウマ君には武器じゃないが別の物をあげよう。
 ここでは危険だから私らも裏庭に行こうか?」

 危険? 何か貰えそうな感じだったのに?

◇◇

 博士の案内でトウマとセキトモはロッカとバンがいる裏庭に移動した。ロッカとバンは広い裏庭のひらけた場所にいるようだ。

「バン君! ちょっといいか?」

 バンが走って博士の元にやって来た。

「何でしょうか? 博士」
「セキトモ君にグレイブを提供した。
 少し彼の馴らしに付き合ってやってくれ」

 バンは察したようで笑顔を見せた。

「分かりました。二人とも契約されたのですね?」
「ああ、そうだ」

 セキトモはバンと共にロッカのいる場所に連れて行かれた。

◇◇

 トウマは博士に連れられて薪がある所に行った。

「少し準備をするからトウマ君はここで待っててくれ」
「分かりました」

 トウマは離れたセキトモが何をしているのか気になって眺めた。的に向けて突きで伸ばせるグレイブの距離感を測っているようだ。

 博士の準備が終わったようだ。

「待たせたな。じゃあ、始めようか。
 私がトウマ君にあげると言った物はこれだ!」

 博士が勿体つけてトウマに見せた物は真魔玉【赤】だ。

「?! それって、真魔玉【赤】じゃないですか?」
「さっき言っただろ? その剣には真魔玉【赤】が着いていたと。
 これは失った真魔玉の代用だ。
 大丈夫だと思うがその剣は古い物なので一応テストしておこうと思ってね。
 剣の機能に問題ないかの検証だ。
 まずはその剣でこの薪を巻き割りの要領で斬ってみてくれ」

 トウマは博士に言われるがまま薪を剣で斬ってみた。

”スパン!”

 薪はきれいに真っ二つに割れた。

「うむ、いい切れ味だ。ではこの真魔玉【赤】を着けて斬ってみようか?」

 そう言うと、博士はトウマの剣の空いたスロットに真魔玉【赤】を装着した。薄白く輝いていた刀身が根本側から薄い赤色の輝きに変わっていく。
 トウマは炎の剣になって炎が噴き出すのかとビビッていた。しかし、刀身が白の代わりに赤で包まれるだけだったので拍子抜けしたようだ。

「よし、力は刀身に行き渡ったようだ。もう一度、薪を斬ってみてくれ」

”ジュパン!”

 薪は今度もきれいに真っ二つに割れた。

 大して変わらな―――

「トウマ君、離れて!」

 博士の声でトウマは薪から飛び退いた。

”ボワッ!”

「うぉ?! 燃えた!」

 真っ二つに割れた薪の切り口全体が一気にメラメラと燃え出した。

 すげー火力!

「トウマ君、早く剣を鞘に納めるんだ。刀身に触れると火傷するから気をつけろ」
「あ、はい!」

 トウマは剣を鞘に納めた。
 博士は燃えている薪に準備していた水をかけ、鎮火させた。

「特に問題は無さそうだな。
 その真魔玉【赤】を取り付けた剣のことを『炎熱剣』と呼んでいたんだよ。
 今見た通り、刃が当たったところを熱で溶かしながら斬り進み、最終的には切り口が発火する」
「炎熱剣ですか。威力ありそうですね」

「そうだな、モンスターに対して通常時の2倍の攻撃力はあるだろう。
 ただし、ここからが大事な話だ。真魔玉は時間ではなく回数制限なんだ」
「回数制限?」

「今の炎熱剣の力の放出1回で抗魔玉の力を1分は消費しただろう。
 つまり抗魔玉フルの10分でも10回、いや剣を構えていたり、剣を振るう時間も抗魔玉は力を消費し続けるので多くて8回くらいしか放出できないだろうな」
「8回? そんなに放出できるんだ」

「逆だよ。8回しか放出できないんだ。
 剣に強い衝撃を受けた時点で力を放出してしまうから相手の攻撃を弾く場合でも1回分消費してしまうんだよ。
 ちなみに真魔玉だけを取り付けても何も起きないぞ。抗魔玉があっての相乗的な力だ。抗魔玉の力の消費時間が一気に減るし、力の使いどころを考えないと肝心な時に使えないって事にもなり兼ねない」

「戦闘中に経過時間と使用回数を把握しながら・・・。
 う~、頭が混乱しそうだ」

「そうだな、極端な例えだがトウマ君がモンスター相手に炎熱剣で8連撃したとしよう。威力は絶大だが抗魔玉の力は2分ともたないだろうね」
「げっ、それだと無闇に剣を振り回せないってことか?!」

「そうだ、使い時を間違わないようにな。
 真魔玉の着脱を素早く出来るような練習もしたほうがいいだろう。
 常に装着したままの戦い方はお奨めできないからな」
「なるほど」

「終わった?」
「うお?!」

 トウマは突然、真後ろからロッカに声を掛けられ驚いた。バンも一緒に来ている。セキトモは居残ってグレイブの練習を続けているようだ。

「ちょうど今、炎熱剣の説明を終えたところだよ」
「トウマさんには真魔玉【赤】を渡したんですね」
「面倒くさいでしょ? それ」

「おい、おい。ロッカ君いきなり面倒くさいなんて言うもんじゃないよ。
 まだトウマ君に説明を終えたばかりなのに」
「いや~、新しい力。
 俺の剣が必殺技的な攻撃もできるようになってメッチャうれしいですよ!」
「だろぉ~、その剣も自信作の一つなんだ。大事に使ってくれよ」
「はい!」

 博士は誇らし気にしているがロッカは不満そうだ。

「さっきも邸宅の中でやたらと騒いでる声が聞こえてたし、何やってたんだか」
「男のロマンですよ!」
「だはは、そうだなロマンだ!」
「それより、もういいんでしょ? 博士なんか放っといてトウマ、あっち行くわよ」

 ロッカはすぐにトウマを連れてセキトモのいる所へ向かった。

「バン君。ロッカ君は私に冷たくないか?
 さっさと行ってしまうし、私はさみしいんだが」

「ロッカはいつもあんな感じですよ。
 さ、博士も一緒に向こうに行きましょう」




※この内容は個人小説でありフィクションです。