スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第79話 穴を覗く阿呆


狩場の山への挑戦2日目。

 スレーム・ガングの5人は再び狩場の山の中腹を目指していた。
 バンの話ではこの山は極端な積層構造らしい。ある程度平地が続いて一段上がる階段のような地形だとか。正規ルートは土砂崩れで傾斜がなだらかになった箇所だろうという話だ。

「言われてみると急勾配になっている箇所があるわね」

「昨日、私たちが討伐していた場所は層で言うと5層あたりでしょう。
 小ギルドで聞いてみたのですが頂上までは10層ほどあるようです。
 頂上に近い9層はモンスターが極端に少ないらしいですよ」

「それって、頂上にユニコーンがいるからですかね?」
「おそらくは」

 本日は初日より進んだ位置、6層あたりでモンスター討伐する予定のようだ。

 セキトモは張り切っている。

「今日、明日でどれくらい討伐できるかだな。
 せっかく来たんだし、なるべく稼いで帰りたいな!」
「頑張ってたくさん倒して行きましょう!」

 今朝、皆に知らされたのは狩場の山に挑むのは3日間ということ。帰りは早朝にオドブレイクを出て1日で都市に戻るつもりらしい。
 週に1回はオフを取りたい。オドブレイクでオフを過ごすのも嫌だ。という誰かさんの意見を反映した強行日程だったのだ。

◇◇

 一同が5層から6層に向かっている途中の事だった。道を外れた位置に立て札を見つけると、またトウマとイズハの二人が見に行った。

《穴↓モンスター出現に注意》

「昨日のより少し穴が大きいっすかね?」
「そう?」

 何処にでも注意書きしてある穴を覗く阿呆がいる。トウマは油断していた。穴を覗き込んだ瞬間に中型のスライムが勢いよく飛び出して来た。

“べちゃ”

 トウマはスライムに顔を覆われて後ろに倒れた。慌てて顔に張り付いたスライムを振り払う。

「トウマさん、大丈夫っすか?」
「ヤバかった! 今、顔の皮一枚くらい溶かされたかも?」

 振り払われた中型のスライムは爪狐に擬態して6層に駆け上がって行った。

 ロッカが二人の元にやって来た。

「トウマ、何やってんのよ! 注意書きの穴を不用意に覗くなんてバカなの?
 しかも、逃げられてるし」

「すみません・・・。あ、何か顔がヒリヒリしてきた・・・」
「ぷっ。顔の垢を取ってもらって良かったわね」

 うー、何も言い返せない。

 三人が戻るとセキトモはトウマの肩を軽く叩いた。

「災難だったなトウマ。やはりあの穴からスライムが湧いてるようだね。しかし、ここのモンスター多過ぎだよな? 何食べて生きてるんだろう?」

「研究結果によるとスライムは水分を取るだけで2週間ほど生きられるようですよ。大型になるほど養分を欲するようですが。
 モンスターも大きくは違わないかもしれませんね」
「モンスター同士で食い合ってるんじゃない?
 霧散する前に体内に取り込んだ分は吸収するらしいから。
 取り込まれた分の魔粒子も移動するみたいだし」

 セキトモは不思議に思った。

「二人ともどこでそんな情報仕入れて来てるの?」

「ああ、先日、都市の図書館で最新のモンスター研究誌を読んで来ましたので。
 ロッカは途中から絵物語の本を懐かしいと読み漁っていましたね。うふっ」

「バン、余計なこと言わない!」

「へー、図書館でそういう情報も得られるのか。今度行ってみようかな」

 バンは更に付け足した。

「あと、面白い情報がありましたよ。スライムは液状なのに核を中心として拳くらいの大きさの部分は球状を維持しているそうです。網の上にスライムを落とすと他の部分は網を素通りして垂れるようですが、核の周りの球状は通らなくて透明な水風船みたいな感じで残ったとか」

「え? スライムってどんな隙間でも通れるってわけじゃなかったの?」

「サイズが大きくなるほどその球状の体積も増えるようです。
 大きいほど通れない所も増えるでしょうね」

「そうなんだ。じゃあ、少なくとも拳以下の隙間からスライムが侵入して来て襲われるって事はないわけだな。いい情報を聞いたかも。
 あとさ、この山、モンスター以外の生き物そんなに見かけないんだけど、なんでスライムは色々なモンスターに擬態できているんだ?」

「それは私も思っていました。
 私の想像でしかないのですが・・・先ほどの穴。
 奥がどこかに繋がっていて、そこに取り込んだ生き物の情報を持つマザースライムが存在しているのではないかと。それしか考えられなくて」

「なるほど、情報を持つスライムか。ん? もしかしてそのマザースライム大き過ぎてさっきの穴通れないサイズなんじゃないか?」

「そうか! あり得ますね。擬態すると余計に通れなくなるからスライムの形態を維持しているとかでしょうか?」

 ロッカは呆れ顔だ。

「二人とも考察好きよね。
 私たちは穴に入って行けないんだから確認しようがないでしょ?」
「それはそうですね」

 一同は目的の6層に着いた。頂上方向への平地の範囲は5層より狭いようだ。といっても300mはある。
 それと少し地形に変化が見受けられる。直径1~2mほどだがクレーターのような地面の凹みが所々にあるのだ。

「何だろ? 蟻地獄の穴? 過去に隕石が落ちた跡とかかな?」

「中心部は小さな深い穴になっているようですね?
 スライムは通れそうにないですが・・・」

 セキトモはクレーターの中に足を踏み入れてみた。地盤は堅めのようだ。穴に手をかざしてみる。

「この穴、風が通っている感じがする。この山、中に空洞があるかもしれないぞ」

「あ、そういう事かもしれません。スライムは通れなくても雨が降ればここからスライムの素は流れて入っていけますよね?」

「なるほど! これで中でスライムが発生する条件は満たすぞ」

 また、ロッカは呆れ顔だ。
 トウマは待ちきれない感じだ。

「早く拠点決めてモンスター討伐しましょうよ!」
「分かった、分かった」

◇◇

 6層では小型のモンスターが少なくなり中型が多くいるようだ。主にいるモンスターは爪蜥蜴、牙犬、爪狐、角鹿。
 モンスターは中型までしか出ないだろうということで、昨日同様なるべく声が届く範囲での個人討伐を続けることになった。モンスター討伐開始だ!

 トウマは中型の爪蜥蜴と戦い始めた。

「トカゲの取れる素材ってどこですか?」

 近くにいたバンが答える。

「主に爪です! 尻尾を切って皮が取れる場合もあります」
「分かりました!」

 ならば腕と尻尾を落とすのが先だな。
 位置は低いけど動きはそれほど速くない、やれる!

 トウマに爪蜥蜴が飛び掛かった。トウマはかわしざまに空中で尻尾を切断。着地の際に都合良くひっくり返ってくれたのでついでに爪蜥蜴の両腕も切断してとどめをさした。すると片方の爪と尻尾側の皮が素材として残った。

「やった、素材落ちたー!」

「トウマさん、凄いです!」
「バンさん、ありがとうございまーす」

「トウマ、やるじゃん」

 やって来たロッカは肩に爪狐の尻尾と角鹿の角を抱えていた。

「何それ。ロッカ、もう2体倒して来たのかよ?」

「たまたま爪狐と角鹿が近くにいたからね。
 爪狐はさっきトウマが逃がしたやつかも?
 互いにケンカしてる感じだったけど両成敗って感じで不意打ちで仕留めたわ」

 不意打ちでモンスター2体の部位落とすってどんな早業だ?

◇◇

 しばらくして拠点としている二輪台車に皆が集まった。お昼にしようという話だ。中型が増えたことで討伐数は減ったがここまでで倒したモンスターは合計24体。
 セキトモ、イズハもモンスター素材を入手したようで満足そうだ。
 かすり傷を負っている者もいるが傷薬を塗る程度で大丈夫そうである。
 バンはもう少し大きいほうが部位を狙いやすいと言って武器を大剣から三刃爪に換えるか迷っているようだ。

 軽く昼食を済ませると、ロッカとバンは皆から少し離れた場所に行き、何やら険しい顔をして話していた。戻って来た二人から一段上の7層に行くと伝えられる。

「実はちょっと見て来たんだけど、7層は大型もいるわ。数は少ないみたい。
 個人戦はここまでにしてパーティー戦で挑むわよ!」

「大型って?」
「私が見たのは牙蟻だったわ」
「蟻かぁ~」

「すみません。
 私はまだ早いと言ったのですがロッカが聞かなくって。
 パーティー戦にするという事で致し方なく了承しました」

「バンは心配し過ぎなのよ」

「手強くなりそうだけど蟻ならセキトモさんと二人で巨大倒してますからね!」
「気合入れるっす!」
「死んだら意味ないからな。ここからは慎重に行こう!」

「そうこなくっちゃ!」
「もう!」

 一同は狩場の山の7層に向かうことになった。




※この内容は個人小説でありフィクションです。