スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第18話 俺たちの戦い方


 トウマとセキトモの二人は『巨大蟷螂(かまきり)討伐』に出る前、蟷螂を倒す作戦を練った。

 さっきは木をなぎ倒した鎌の威力に驚かされて防戦一方だった。
 だけど冷静に考えてみたらカマキリの力が強かったわけではない。
 二人で話し合った結果、鎌の切れ味が凄かったという結論だ。

 俺の剣でも鎌の攻撃を弾くことは出来た。
 力が強かったのなら防いだとしても吹き飛ばされていたはずだ。

 カマキリは単純に獲物に対して鎌を振り回していただけだ。
 相手の動きを見て、鎌を繰り出していたわけではない。
 カマキリの鎌の左腕はロッカが斬り落としてくれている。
 おかげでカマキリはもう二刀流でもない。
 俺たちから見て右側からの攻撃はないに等しい。
 攻撃してくる方向が分かっていればそう怖くはないものだ。

 カマキリの左側からの攻撃を防ぐだけでいいんだ。
 そう、こっちには大盾持ちのセキトモさんがいる!

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 トウマとセキトモは蟷螂が襲ってくる前に先制攻撃をしかけた。
 セキトモは左側に大盾、右に槍を構えて正面を向いている蟷螂に突進。トウマは先に行くセキトモを追従するように走った。トウマは蟷螂に捕捉されないようセキトモの後ろで剣を抜き、左側に丸い盾を構えて隠れながら走る。

 一発で決める!

 セキトモは蟷螂の最初の斬撃を大盾で受けて左に弾き返した。来ると分かっていれば大振りな攻撃を弾くことは簡単な作業だ。鎌を弾き返された蟷螂の体勢が一瞬揺らいだ。

「トウマ、今だ!」

 二人は昼にふざけながら剣と槍の連携を考えていた事を実戦した。

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「じゃあこれは?
 俺がセキトモさんの大盾を踏み台にして高く飛んで斬る!
 それか~、俺がまずセキトモさんの大盾の陰に隠れていて~。
 いきなり飛び出して攻撃するビックリ斬撃!」
「いやいやいや。
 トウマ、それじゃ剣と槍じゃなくて剣と大盾の連携じゃないか~」
「あれ? 槍使うとこ無かったですね。ははは」
「トウマ~~」

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 二人は蟷螂討伐に向かう前に少しだけ練習した。

 ぶっつけ本番じゃないぞ!

 トウマはセキトモが上に向けた大盾を足場にして上空へと高く飛び上がり、蟷螂の首を横切りで一線、渾身の力で叩き斬った!

”スバッ!”

 見事に蟷螂の首は切断され、首から上の頭が蟷螂の胴体から落ちる。トウマはそのまま空中で一回転し、落下する勢いのまま蟷螂の鎌の右腕も切断した!

 蟷螂の鎌の右腕も切断成功!
 蟷螂は両腕を失い、鎌の攻撃が出来なくなった。

 どうだ、ロッカ直伝見様見真似の俺流一回転斬り!
 ちょっと技名長かったか、一回転斬りでいいか。

「これでお前もお終いだろ!」

 しかし、蟷螂は頭を切り落とされてもなお動き、羽を広げ、バタバタ、クルクルと暴れ回り出した。巨大な蟷螂の旋回はそれだけで近づくことができないほど激しい風を周囲に吹き付けた。まるで竜巻のようだ。
 トウマは蟷螂の旋回に巻き込まれ弾き飛ばされた先で木に身体を打ちつけた。

「うぐっ・・・、うそだろ?! あいつ頭失くしてもまだ動くの?」

”ドスッ!”

 セキトモの槍が頭を失くした蟷螂の胴体を勢いよく貫いた!
 暴れ回っていた蟷螂の動きがピタリと止まり、ゆっくりと霧散しだす・・・。

 セキトモさんがやってくれた!

 地面に落ちている切り落とした蟷螂の頭がトウマを見ていた。
 しかし、蟷螂の頭はあがくことなくゆっくりと霧散していく・・・。
 トウマは蟷螂と目が合っているかのように感じ、蟷螂の頭に向けて声をあげた。

「見たかカマキリ! これが俺たちの戦い方だ!」

 やがて蟷螂は消えていった。
 『巨大蟷螂討伐』成功だ!

「やった・・・」

 セキトモはヘタリ込んだ。

「セキトモさーん、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。トウマも無事みたいだな。
 カマキリの頭落ちたのにまだ動いてたから冷や汗だらだらだったよ。はは・・・」
「最後はきっちり持っていったじゃないですか?」
「いや~、必死だったよ。
 鎌が無いからすぐに冷静になれたけど、ここで槍の長さが役に立ったな!」

 仇は取ったぜ、ロッカ!

 二人は互いに喜び、一息ついたところで戦利品を回収した。

【魔石】 1個
 ・・・少し緑の不純物が混じっていた。巨大蟷螂の魔石だけあって大きい。
【蟷螂の鎌】
 ・・・切り落とした鎌の腕は鎌の部分だけ残っていた。
【蟷螂の牙】
 ・・・頭があった付近に牙が残っていたので驚いた。自分の鎌の腕を食っていたので、もしかしたらこっちの方が硬度が高いかもしれない。これで噛みつかれてたらヤバかったかも。

 今回は二人とも負傷することはなかったので意気揚々と街に戻った。

「トウマ、どうする? 博士の邸宅に行って報告する?」

 そうだった。バンさんの忠告を無視して討伐に行ったんだった。

「い、いや、今日は止めときましょう」
「だよね。さすがに・・・ね」

 セキトモさんも分かってるみたいだな。

 二人は討伐報酬を受け取りに祭り中のギルドに向かった。

 トウマとセキトモはパーティー申請をしていない。
 『巨大蟷螂討伐』の報酬はトウマのパーティー『可愛い女子達とその玩具』
 (何とかならんのかこの名前ー!)で受け取って二人で分けることにした。
 難易度Cを二人で個人討伐したなんて噂が広がると面倒だからね。という理由。

 俺的には「がんぐ」の名が更に広がりそうな予感しかしないんですけど・・・。

【巨大蟷螂討伐依頼 難易度C】
 討伐報酬 17万エーペル

【素材】
 蟷螂の鎌 5万エーペル
 蟷螂の牙 8万エーペル

 カウンターのオッサンがたまげていた。

「祭り中なのにまたお前らか。すげーな、おい。
 今ある難易度Cのクエスト全部やっちまうとはな!
 牙なんて珍しい物まで手に入れてくるし」

【祭りの魔石換金報酬】
 魔石・小 18個 10万8千エーペル(スライム討伐 トウマ 11、セキトモ 7)
 魔石・中 1個 16万エーペル

「またこれも珍しい魔石だなぁ。今日は特別だ! 大盤振る舞いだぜ!」

 カマキリが落とした大きい魔石は魔石・中だった。更に大きい魔石・大もあることを知った。驚いたことにカマキリが落とした不純物ありの魔石・中 1個だけで16万エーペル! 不純物が入った魔石は珍しく高いこともあるが、祭り期間中なので換金率2倍も適用してくれた結果だ。

 合計 56万8千エーペル。一人28万4千エーペルの分け前になった。

 俺の所持金50万エーペル超えたよな? たった4日で?
 金銭感覚がおかしくなりそうだ。
 成果を上げれば見返りもあるってことなんだろうけど。
 命かけるほどでは無い・・・、無いよな?

 セキトモは嬉しそうな顔でトウマに言った。

「思わぬ報酬だったね。
 名前は残らないけど僕は難易度Cの成功初めてだったし、今日は祝杯だ!
 ご飯行こう!」

「行きましょう! さ、他の討伐者に捕まらないうちに早く」

 セキトモは不思議そうな感じで首をかしげたがトウマは説明するのが面倒になってセキトモの背中を押してギルドを出るように誘った。

「まあ、まあ。とりあえずここを出ましょう」

 また内容を伏せた討伐談する羽目になりたくないしな~。

 二人は助けてくれたロッカとバンに後ろめたさを抱きつつも今日の成果を大いに祝うことにした。

 あの二人には改めて謝罪とお礼をしないとな。




※この内容は個人小説でありフィクションです。