スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第51話 中央大陸へ


 巨大触手烏賊(イカ)を討伐した一同は大橋で一息ついていた。
 タズはバンから借りた治癒のロッドで皆の打撲等の傷を治している。イカは鋭利な攻撃ではなかったので傷は破壊で飛んで来た瓦礫などがかすったような傷くらいしかないのだが、タズは僅かな傷を見つけてはそこもいいですか~と治していく。
 使えるのは通常治癒で10回までなので単に使ってみたかったのだろう。

 タズは治癒のロッドが気に入って欲しくなったようだ。中央に戻ったら探してみるらしい。

 ギルは拾って来たイカの魔石をトウマに渡した。

「俺が貰っていいんですか?」
「イカにとどめさしたのはお前だからな」

 どこかであったシーン再びだ。
 ここまでは男前のギルだったがその後はしつこかった。

「ところでよー、何でトウマが真魔玉持ってんだ?
 それに何だよその剣、この前までそんな剣持ってなかったよな?
 どこで手に入れたんだよ!」
「い、いや~」

 トウマはスレーム・ガングのメンバーを見るが、皆よそよそと目をそらす。
 トウマは考えていた言い訳で対処した。

 剣はじいちゃんから譲り受けたもので今まで修理に出していた。
 どこで手に入れたかは知らない。
 これ以上聞かれても他に何も答えられない。

 考えといて良かったー。

 剣のことを言っているので改良を修理と言ったこと以外は嘘ではない。
 トウマはこれで押し通すつもりだ。
 嘘はないと思ったのかギルは問い詰めるのを諦めロッカに聞く。

「お前ら変わった武器持ちばかりだな?
 そういうやつらをメンバーに集めてんのか?」

 ロッカは勘違いしているギルの言葉に乗っかった。

「気づいた? まあ、そんなとこね。
 色んな武器があって面白いでしょ?」

 ちなみにバン、セキトモの武器は中央からの伝手で手に入れたということになっている。イズハは観測者時代に手に入れたので教えられないということにしたみたいだ。皆が中央からの伝手と言ったら怪しまれそうだったからだろう。
 それよりイズハが元観測者だったことに驚かれた。
 タズは「イズハさん、忍者じゃなかったのですか・・・」と残念がっていた。

 一息ついたところで火が残っている松明を手にして馬車がある所まで戻ったが、馬車を待たせている近くまでバンが放った矢が飛んでいたことに驚いた。橋の脇近くに突き刺さっていたのだ。ここは壊れたけど、仕方ないよねーってことで刺さっている矢は回収した。バンは矢が見つかってホッとしていた。橋の関係者は大きな音がしてびっくりしたそうだ。

 深夜で皆疲れていたので現地解散。
 さっさと帰って寝ようということになった。

翌日-----。

 スレーム・ガングとユニオン・ギルズは昼過ぎにギルドに集まっていた。
 『巨大触手烏賊討伐』の報酬を受け取る。

【巨大触手烏賊討伐依頼 難易度B】
 討伐報酬 180万エーペル

【魔石換金報酬】
 魔石・大 1個 10万エーペル

 合計 190万エーペル。
 討伐報酬はユニオン・ギルズと分けるので実質は90+10の100万エーペル。
 街からの討伐依頼+大橋+夜限定の討伐だったので報酬はタコより高額だったが、共闘討伐だったので一人当たりの分け前はタコより少ない20万エーペル。

 カウンターのおばあちゃんが声をかけてきた。

「あんたたち凄いわねぇ。
 出たばかりの難易度Bクエストもすぐに片付けてくれるなんて。
 やっぱり、ここらの討伐者とは違うねぇ~」

 ギルはドヤ顔で言う。

「当り前よ。俺たちは中央から来てるんだぜ。
 だが、もう中央戻るからあとはここらの討伐者に頑張って貰うしかねえな」
「そりゃ残念だわねぇ。
 お陰様で難易度Bのクエストが無くなったので助かったよ」
「困ったときは中央に応援要請するといいぜ。ここはそんなに遠くねえからな」

 その後はユニオン・ギルズのたまり場となりつつある酒場で打ち上げになった。

 ギルが音頭を取る。

「まあ、これだけの人数でやったんだ。結果的には楽勝だったな!
 では俺たちの勝利を祝って、乾杯!」

『乾杯!』

「にしてもよく糸を結びつけてたわね、あの場で思いついたの?」
「観察に行ったときにもし海に落ちたらって話になって。
 何か対策できないかなってイズハと考えてたんです。
 まさか吹き飛ばされるとは思ってなかったですけど。ははは」
「何か屈んでやってるのは分かりましたけど、暗くて見えませんでした。
 あれは糸を街灯に結んでいたのですね?」
「考えといて良かったっすね」
「あのとき僕はもうダメだと思ったよ。トウマが死んでしまったって・・・」
「ご心配お掛けしました」

「そうそう。バンの剛槍弓ってあれ射程100mって言ってなかった?
 300は飛んでたわよね? イカ貫いた上でよ」
「射程は力や軌道が変わらない距離のことですよ」
「そっか。確かに落ちて刺さってたとこは脇にずれてたわね。
 下手したら馬次郎に当たってたかもしれないと思うとゾッとするわ」

 にしても剛槍弓凄かったな。
 いや、剛槍弓を使えるバンさんの力が凄いのか?
 あの矢を300mも飛ばす力って・・・。

「でも、ブーストは使えませんでした。
 矢のほうに抗魔玉が着いていたからでしょうか?」

 バンさん、やってはみたのですね。

「いや、いや、あれにブーストかけたらとんでもないことになるんじゃない?」

 ギルが割り込んで来た。

「おいおい、そっちで盛り上がり過ぎだろー?」

 タズがロッカに抱きつきに来た。

「師匠~!」

 最初はパーティー別で座っていたがお酒もすすみ次第にごちゃ混ぜになる。
 スレーム・ガングでお酒を飲んでいるのはセキトモだけだ。サイモンがお奨めのお酒を選んでやっている。
 ロッカとバンは相変わらず全メニュー制覇する勢いでメチャクチャ食っている。

 話題がトウマの剣についてに変わると、ロッカが言う。

「一応言っとくけど、ギルの剣はトウマのと違って模倣品よ。
 多分、真魔玉【赤】着けたら壊れると思うわ」

 バンも同意する。

「俺の2スロットの剣じゃ耐えられないってことか?
 これけっこう高かったんだぜ」

「その可能性が高いってだけよ。真魔玉手に入れたら試して見たら?
 下手したら一緒に着けた抗魔玉まで使い物にならなくなるかもね? あはは」

「なんてこった・・・。それじゃあ剣から探さなきゃならんのか?」

 カリーナがギルを慰める。

「ギルは今でも強いんだからゆっくり探せばいいわ」
「そうか? そうだよな。へへ、カリーナが言うなら間違いねえ。
 だが、真魔玉を諦めるわけじゃないからな」
「分かってるわ」

 タズが言う。

「癒しのロッドも探してくださ~い」

 サイモンは今回斬ることが出来なかったのでセキトモのグレイブに近い斬れる性能もある刃が長い槍を探してみたいと言っている。グレイブは理想だが重くて使えそうにないとのことだ。
 ユニオン・ギルズは明日、通行止めになっている大橋を特別許可を貰って徒歩で渡る予定のようだ。

 宴も酣。お別れの挨拶を交わし、解散する。

 「先に行って待ってるぜ」というギルに「それ二度目ですね」と突っ込むバン。
 また何かあるかも?と一瞬不安がよぎるが今回は無事渡ったようだ。

 後日、大橋の工事が始まる。
 ボコボコになった道の補修工事に加え、今回のモンスターの件を踏まえて街灯の光がなるべく海面を照らさないように工夫を入れるようだ。サイモンの意見を取り入れたらしい。
 スレーム・ガングは大橋の工事が終わったら中央に渡る予定だ。

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 約二週間後、大橋の工事が終わった。
 その間もいろいろあった。

 祭りが開催され草原エリア限定のスライム討伐対決をした。
 トウマ&セキトモ 対 ロッカ&バン。イズハは興味なさそうで不参加。
 結果はロッカ&バンの勝ち。

 トウマの胸の傷事件。
 モンスター討伐ではないが盗人の胸に剣で傷をつけたのでそいつを探していたという奴らにトウマが温泉で捕まり、犯人呼ばわり。傷が三本だったのですぐに誤解は解けたのだが話を聞いたロッカとイズハが盗人を見つけだして無事解決。
 まあ、二人が探偵みたいなことをして楽しんでいたといったところだ。

 トウマとイズハが書いた武器の評価報告書をバンに見て貰ったらほぼ全部書き直しになって苦悩したり。

 皆でホラックの釣りについて行って海岸からの海釣りも体験した。

 トウマはイズハと一緒に博士の邸宅の地下室に忍び込もうとしたらホラックに見つかりメッチャ怒られた。罰で色々手伝わされたが力仕事ばかりだったのでイズハは弱音を吐いていた。
 その後、ホラックが剣を使うことを知りトウマは頼み込んで少し鍛えて貰った。

 ユニオン・ギルズが言っていた砂浜にも行った。
 何故かヒトデのモンスターが湧いていたが動きが鈍かったので一応皆で一掃。

 etc…

 結果的にだがアーマグラスの街を拠点として一ヵ月近く滞在したのだった。

 ホラックが中央大陸への旅立ちの準備を終えた一同を見送る。

「皆さま、お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「「行ってきま~す!」」

 スレーム・ガングの5人は目的の中央大陸に向けて出発した。




※この内容は個人小説でありフィクションです。