スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

作者:亜形


第53話 装備新調してみよう


翌日-----。

 トウマ、セキトモ、イズハの三人は道具屋に出向いた。買い替えで下取りに出せるかもしれないのでフル装備の恰好だ。
 店には武器、防具、道具など討伐者の旅に欠かせない物が置かれていて宿場町なのに東大陸にある街の道具屋より断然広かった。

「うわぁ~、抗魔玉まで置いてありますよ。
 東大陸では一回もお目にかかれなかったのに。
 30万エーペルって・・・高っ、こんな小さい玉なのに」
「だね、僕はグレイブに2つ着けてて予備は持ってないから買うか迷うところだな。
 でも高いんだよな。僕のは中古で手に入れたけど新品は倍の値段はするんだな。
 これ見ると安く手に入れたんだなと思うよ」
「抗魔玉に中古、新品は関係ない気がしますけど」
「だよね」

「自分も予備ないんで迷うっすけど、これ買うと他のもの買えなくなっちゃうっす」

「皆、一つは博士から貰った物だよね?
 よく考えたら博士こんな高価なものポンポンと・・・」

 俺は二つとも貰った物なんですけど・・・。
 ロッカに出会ってなかったら今はお金貯める仕事してたかもな。

「お、ポーションってのもあるっすよ。これ治癒の薬っすね」
「え? 博士が持ってた治癒の薬かな?」

 陳列してあるポーションは博士が持っていた治癒の薬とは違うようだ。飲んでもよし、振りかけてもよしの即効性のある治癒の薬だが軽い傷が対象。深い傷でも効果はあるが完全に治るほどのものではないようだ。

 バンさんが使う治癒のロッドでの通常1回分って感じだろうか?
 でも高いな、5万エーペルもするよ。

 とりあえず、すぐには買わず一通り見て回ろうということになった。手持ちの資金では足りないかもしれないからだ。

 まずは短剣が陳列されている所を見て回っているが様々な形の短剣が並んでいる。東大陸では売れ筋の2~3種類くらいしか置いてなかったがここには短剣だけで10種類以上置いてあるようだ。

「自分の短剣も買い替え時かと思うっすよね。
 もっと軽くて丈夫、且つ切れ味がいいやつ無いっすかね?」

「武器は買わなくてもいいんじゃないか?
 僕たちは契約あるし、要望出せばくれるかもよ?」

「そっか。新しい武器貰えるかもっすね。
 じゃ、どんな物があるのか見るだけにするっす」

 武器に関してはそれぞれで見て回り、後で集まろうということになった。
 トウマは剣のコーナー、セキトモは槍のコーナーに足が向いた。

 沢山種類あるけど、1スロットの剣しか置いてないな。
 刀身の長さや厚さ、幅も違ったりして色々あるんだな~。

 トウマは大剣のほうにも目がいった。バカでかい大剣だ。

 これは俺には重くて持てないな。
 使えれば一撃必殺って感じなんだろうけど。
 セキトモさんなら使える? いや、片手じゃ振れないだろうから使わないか。
 バンさんならひょっとして・・・。
 いやいや考えないでおこう。

 トウマはセキトモと合流し、バンなら使えそうな武器があったという話をした。

「ははは。武器だしバンが使ってた可能性もあるんじゃない?」

「売れるときは売れるそうですよ。こっちは力強い人多いんですかね?」

「負けてられないな。僕ももっと鍛えなきゃ!」

 イズハも合流して次は本命の防具を見ることになった。
 防具も様々な種類がある。
 防具に関してはモンスター素材を使った物が多く見受けられた。

「これは凄いな。沢山あって決めきれないかも」

 トウマとセキトモは全体的に買い替えるつもりだ。
 セキトモの大盾だけは熊の爪痕が恰好いいからそのままにして欲しいと二人はお願いしている。

「どういう基準で選べばいいんですかね? 恰好よさ?」

「あはは。恰好よさか、気に入るって意味ではそれも大事だけどな。
 一番重要なのは自分にとって強度と軽さのバランスが取れている物かな。
 まずはモンスターの攻撃に耐える強度は必要だろ?
 かといって強度を上げたことで重過ぎたら自分の動きが鈍くなるだろ?
 どっちも満たすのが理想だね」

「なるほどー」

「自分軽いのじゃないとダメっすね。
 力も強くないし、動き鈍くなったら役立たずになってしまうっす」

「ピンキリだけど衣服のように着こむチェインメイルってのもありだね。
 重く感じなかったらだけど」

「チェインメイルかぁ。あ、これか」

 トウマが見たのはロングコートのような黒地に白のラインがあしらってあるチェインメイルだ。達人の剣士が着てそうだ。

「ちょっとカッコいいかも」

「そこそこ強度もありそうだね。
 外側は何かのモンスターの皮かな?
 内側には何本か鉄線みたいなのも入れてあるっぽいし」

「ありっすね。でも走るとき邪魔になりそうなので上半身だけのほうがいいっす」

 コートを上半身だけにするって恰好悪い気が・・・。

 イズハは迷いに迷って衣服の内側に着込む軽いチェインメイルを上下で買うことにした。モンスター素材で編んだ物のようだ。
 衝撃の軽減ではないらしいが通気性もよく軽い斬撃なら通さないとか。内側に着るので見た目は変わらずだ。
 あと、ボロボロになっていたグローブを新調。糸を引いても崩れないような丈夫な物にしたようだ。合計20万エーペルを支払った。

 セキトモは今の装備に近いものを買うことにした。少し強度が上がって軽くなると言われたお薦めの装備一式だ。合計35万エーペルを支払った。

 トウマは軽装備のお薦め装備一式を買った。両腕、両足、胸、肩に着用する。これもモンスター素材が使われているだけあってなかなかの軽さである。
 あと、しっかりした軽い盾も購入。合計30万エーペルを支払った。

 皆、なかなかの出費だった。
 久しぶりにまとめて売れたのか店主らしき人がホクホク顔だ。

 トウマとセキトモの前の装備は随分痛んでいたようで買値がつかなかったが引き取っては貰えた。

「まだ全然使えると思ってたのに買値がつかないとはね・・・。
 よく見たら気づいてなかった傷もあったし」

「修復できないような傷が入ってるとダメっぽかったですね。
 モンスター素材が使われているなら買値がつくみたいなことも言ってましたけど。
 俺の胸当ても裏側に傷入ってたし、いつ入ったんだろ?」
「激しかったのって狼かイカじゃないっすか?」

「狼の時は丸い盾で攻撃受けてたけどその時の衝撃ってのはあるか。
 イカのときは・・・あっ、凄い勢いで転がったな」
「あー、あったね! 受け止められなくてゴメンな」
「いえいえ」
「まあ、僕の場合、持ち帰っても荷物になるだけだし、引き取って貰えただけでも有難いよ」

 三人は抗魔玉の売り場に戻った。

「もう手持ちの資金で抗魔玉は買えないな。ギルドに行って預けてるお金を持ってこないと無理だ」
「残念ながら自分はもう買えないっす。少しは残してないと心配っすからね」
「俺も手持ちじゃ足りないです。
 現状困っている訳じゃないし次の機会でいいんじゃないですか?」
「そうだね。当初の目的の装備新調はできたし僕はこれで満足。
 次来るときはもっとお金持ってこないとダメだね」
「自分だけ買えないのさみしいのでそうして貰えると有難いっす」

 フフフ。イズハには悪いけど、ギルドに預けている金を合わせるとまだ250万エーペルくらい残ってるんだよね。
 熊討伐が大きかったもんな。
 メルクベルに着いたらもっといいのに買い替えできそうだし。
 ここは出費を抑えておくのはありだよな?
 セキトモさんも俺と変わらないくらいの貯えはあると思うし、同じ考えかな?

 三人は一旦宿に戻って新装備を外し、店で昼食を取った。

◇◇

 昼からは宿場町を見物して過ごすことにした。
 中央通りで時々橋の補強材料と思われる鉄骨を運ぶ業者。
 なかなか迫力のある光景だ。
 荷台に石畳を乗せた馬車も通る。
 露店を見て回ったり小腹が空いたら屋台で買い食いだ。観光気分で楽しんだ。

「そういえばギルたちってメルクベルにいるんですかね?」
「どうだろうね?
 ロッカやバンが知り合いだったんだからメルクベルなんじゃない?
 まあ、当面はここが拠点みたいだから会えるのはまだ先だろうね」

「会えるまでにもっと成長しないとですね! 驚かせてやりましょう!」

◇◇

 ロッカとバンはスイーツ店が少なかったようで不満そうに宿に帰って来た。

 明日からはいよいよ中央大陸のクエストに挑戦だ!




※この内容は個人小説でありフィクションです。